2023年6月23日金曜 明け方

眠れない夜、インターネットで初恋の人の名前を検索していた。もう30歳になるというのに。

同業の同級生のインスタのアカウントから同級生らしきアカウントを見つけ出して、そこから数珠繋ぎに続々と同級生のアカウントを発見したが、初恋の人にまで至ることはできなかった。このご時世に本名で公開アカウントを持つような人間ではないことはわかっていたし、その点では安心した。ほとんど話したこともないんだが。

SNSのアカウントは見つからなかったが過去の記事に残る名前から通っていた大学までは見当がついた。我ながら気持ち悪いがそれだけで少し満足できた。

思えば化粧をした顔も見たことがない。どれだけ歳を経たかなんて見当もつかない。苗字は変わったんだろうか。子供もとっくにいるんだろうか。

会ったところで話すこともないし、会いたいとも思わない。けど今どんな風に暮らしてるかが知りたくてたまらない。

小学二年生から7年もの間、やり場のない愛情を抱え続けた。教室で会話に聞き耳を立て、遠目で視界に入れることしかできなかった。ただ奇跡を待つだけだった。奇跡は起きなかった。

格好つけてそそくさと帰った中学の卒業式。あの日一歩踏み出していればなにか変わったんだろうか。

2023年6月21日水曜 夕方

久しぶりに人に会ったらなんだか上手く会話できなかった。こうやって何人もの人と疎遠になったんだな。

先々月から使い始めたヘアオイルが存分に効果を発揮した結果、髪がサラサラの直毛になった。おかげさまでパーマが台無し。

髪を濡らして乾かないうちにワックスでセットすればかろうじて巻き気味にはなるが、そこまでするほどの用事もしばらくの間なかったので次第に鏡に映る直毛の自分の姿に違和感を覚えることもなくなった。

いざパーマを当て直してみたら、むしろくるくる頭の自分の姿に違和感を覚えた。

正解がわからなくなってしまい、美容師さんの「どうですか?」に対して言葉が詰まって返答が遅れてしまった。不満があると思われていたら申し訳ない。全然良い感じ。

 

帰りがけ、帰宅ラッシュを避けるべくラーメン屋さんで塩つけ麺を食べた。可も不可もない味のものを食べるたびに東京で暮らしているんだという実感をする。実際の水準はどうあれなんとなくそういうイメージだから、ただそれだけ。

混雑している電車を避けることには成功したが、車両は空いているのに扉付近で突っ立ち道を塞ぐ人達に遭遇。そのうちの一人にぶつかってしまいしっかりと睨まれたが謝る気にはなれなかった。

すぐ降りるからわざわざ通り道を塞いでまであんなところに立っているんだろうなと思っていたら、そういうわけでもなかった。他者への思いやりもなければ合理性も欠く。馬鹿な人達なんだな、と思った。

2023年6月21日水曜 明け方

三週間ほどの長期休暇が終わる。

一昨日の晩ごはんを思い出せないどころか、どこまでが昨日でどこからが今日なのかもわからないほどメリハリのない生活を送った。

昨日は夏休み最終日の愚かな小学生の如く、やらなければいけないことに手をつけた。手をつけたものの達成度は40%くらい。

昔からずっとこうだ。最悪飛び込めばどうとでもなると頭の奥で思ってるから抜かる。宿題だって最後までやり切ったことなんてなかった。

そんなこんなで眠れる気配がないままベッドに横たわっている今、気分が晴れない。

今日良かったことを考えよう。思ったより早く起きられたこと、届いた新しい仕事道具が思っていたより馴染んだこと、ちゃんとあり物で自炊したこと、仕事の書き物を提出したこと、くらいかな。なんてぬるい暮らしぶりだろう。死ぬまでこれが続けばいい。

2023年6月18日日曜 未明

ポルノグラフィティのドキュメンタリー番組を見るためにスペシャオンデマンドに加入した。無料期間が終わる前に解約するつもりではあるが。

久しくポルノのお二人のオフの姿を見ていなかったのでさぞかし変わられたであろうと構えて視聴し始めたけれど、変わりない温度感でとても安心した。今でも変わらず会場でランニングしている昭仁さんの姿を見られてとても愛おしい気持ちになった。

あれほどの規模感のアーティストでも人任せにすることなくライブ演出に積極的に意見したり、演奏についてもその時々で自分達主導でアレンジを考え直したり、ということをするのは当然のことなんだろうけど改めて確認できてよかった。結局どこまで行っても己の力で進んで行くしかないんだなと思い知らされるし、背筋が伸びる。

たった数時間、数分の映像でも人柄ってのはある程度伝わるもんなんだなーと思ったのでせめてカメラの前ではシャキっとしようと思う。

2023年6月16日金曜日 夕方

ベランダで洗濯物を干していたら向かいの一軒家の前でタバコを吸ってるおじさんと目が合った。いつもこっちの部屋まで匂いが漂ってきて迷惑に思っていたのだけど、それを察したのかすぐに吸うのをやめた。

日が暮れる頃、洗濯物を取り込もうとしたら2階の窓から身を乗り出して煙草を吸うおじさんが目に入った。人から居場所を奪ったような気分だった。

2023年6月16日金曜日 昼

 


今朝、電話で目が覚めた。今朝とは言っても昼の12時。マンションの管理会社からの電話。

先月管理会社が別の会社に変わった。それに際しての家財保険に加入しているか否かの確認だった。

前の管理会社が大雑把だったのか、入居者によって保険の有無はまちまちらしい。自分が入居時に保険に加入したかも定かではない。

入居して一年経つ。このまま何事もなければ来年の更新時には引っ越しを考えている。この家に対してほとんど不満はないが、三十代になって風呂トイレ一緒の物件に住んでいてよいものかと考えると、難しい。ということもあり、後一年住むために改めて保険に加入をしようとは到底思えない。

そういえば隣に住んでいるおばさんはどうだろう。どんな仕事をしているのか知らないが平日の昼間も家にいることが多いらしく、時々咳が聞こえる。こちらの音も聞こえていたら嫌なので窓を空けて生活するのはやめて欲しい。ベランダにはケーブルテレビ用らしいアンテナが設置されている。何年もここに住んでいるのか、これから先もここに住む想定なのだろう。

自分の未来を考えるとき、同じように人の未来も考える。比べるわけじゃないけれど、他人のことが一層わからなくなる。